利用方法

日本を動かす知をつなぎ、政策課題を論じ、ビジョンを提示するシンクタンク

トップ > 研究の成果と課題の発信 > NIRA政策提言ハイライト > AIで形勢逆転を狙え

NIRA政策提言ハイライト

AIで形勢逆転を狙え

NIRA政策提言ハイライト 2017/01発行

米政府報告書にみる米国のAIについての評価
 2016年12月、ホワイトハウスは人工知能(AI)に関する報告書を公表した。AIによる労働環境の自動化が、米国の労働市場や経済へ与える影響に着目したものだ。これによると、労働環境の自動化は、個人、経済や社会に新たな機会を与えるとして、引き続き米国経済に好影響を及ぼすという。その根底には、テクノロジーは生産性を向上させるという目算がある。生産性の向上は平均賃金を押し上げ、労働時間を減らし、結果的に経済的・時間的余裕を生む。しかし、国が適切に対処しなければ、AIによる恩恵は限られた少数の手に渡り、経済格差がより一層拡大するとも指摘している。
 同時に、労働環境の自動化は数百万の米国人の雇用に影響を与えると予測する。また、労働者は新たな労働市場に適応するためにスキルアップを図ることが求められる。
 AI研究開発の最先端を行く米国は、AIによって経済を活性化させ、加えて、経済格差に歯止めをかけるのが狙いだ。

AIを活用し労働力不足の解消と経済活性化を目指せ
 我が国においても、AIを活用して新製品・新サービスの開発や業務の効率化を図る企業が増えつつある中、AIが今後労働市場に大きなインパクトを与えることは必至だ。しかし、少子高齢化・人口減少による労働力不足という課題を抱える我が国においては、必ずしも悲観的な状況とは言えないだろう。AI等の導入が進めば、サービス業や福祉等の人手不足が懸念される分野で労働力を補える可能性があるからだ。
 経済産業省の試算では、AIやロボットを導入することで、単純な接客業務に従事する人は2030年度には2015年度時点より51万人減少するという。つまり、AI等の技術革新が活かされれば、人手不足が顕著なサービス業で人を必要とするケースが減る。
 また、AIに仕事を代替される人がいる一方、AIが代替できない分野へ転向する人も増えるはずだ。前述の試算でも、人が直接対応することが高付加価値を生む高級レストランの接客係等に従事する人は、179万人増加する見込みだ。低付加価値産業から高付加価値産業へシフトすれば、質の高い労働に見合った高賃金も望める。このように、AI等の技術革新によって、労働力不足の解消のみならず、賃金上昇を起点とした経済の好循環の実現も期待できる。
 では、どのようにしてこうした技術革新を活かすか。NIRAオピニオンペーパーNo.25「AI時代の人間の強み・経営のあり方」では、AIと人間が融合的に協働すれば、生産性を向上させ、その結果、新たな仕事や雇用を創出するという可能性に焦点を当てている。例えば、「どのような情報の下で、どのような判断や行動をすべきか、そして何が正解なのかを定義する」ことができる業務をAIに任せることで、人間はAIにできないことをより質の高い形で提供する。また、こうして業務全体が見直され、経営全体の再編成が進むことで産業構造も大きく変わる可能性があると指摘する。新規参入や異分野連携が進展すれば、イノベーションを刺激することができる。
 少子高齢化や人口減少という大きな課題を抱える我が国は、経済社会において劣勢にあるといえる。しかし、AIを上手く活用できれば、そうした課題を広汎に解決することができ、形勢逆転を狙うことも可能だろう。AIが融和した社会を念頭に置き、戦略を練ることが求められる。




(参考)
経済産業省 産業構造審議会「新産業構造ビジョン」~第4次産業革命をリードする日本の戦略~

羽木千晴(NIRA研究コーディネーター 兼 研究員)

※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。E-mail:info@nira.or.jp

このページのトップへ