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NIRA政策提言ハイライト

Brexitとトランプ現象に見られる分断社会における新たな担い手

NIRA政策提言ハイライト 2016/12発行

「敗北」したエスタブリッシュメント
 2016年6月のイギリスのEU離脱国民投票と11月のアメリカ大統領選挙の結果は、世界中に衝撃を与えた。これらの選挙ではまさに国民を二分させる議論となったが、両国ともに「敗北」を喫したのは既成のエリート層やエスタブリッシュメント(支配階級)であった。2つの選挙の投票結果を見ると、学歴によりその投票先に違いが生じていることがわかる。学歴が低いほど「離脱」またはトランプ氏への投票割合が多くなっている。市場のグローバル化や産業のIT化による恩恵が少なく、むしろそれらによって自分の生活が脅かされていると感じる人々が、現政権が進める政策に対して「No」を突きつけた結果ともいえるだろう。
 移民や新興国の台頭により日々の生活に不安を覚える人々は、政府から見捨てられたと感じ、エスタブリッシュメントへの不信感を募らせていった。一方で政治家や学識者はそうした人々の不満を読み取ることができず、見通しを誤ってしまったのではないか。多くのメディアが選挙結果を事前に予想することができなかったことは、両者間の意識の乖離の表れともいえる。経済のグローバル化は、成熟した先進国において社会を分断し、大きな溝を生み出してしまっている


分断社会の溝を埋める中核層
 このように世界中で社会の分断が深まる中、国民の間で合意を形成し、民主主義を機能させるためには、知識層と労働者層の間の溝を埋める存在が必要である。NIRA総研では日本社会の将来を担う新たな人々として、「中核層」という新たな人間像を提唱している。NIRAオピニオンペーパーNo.12「中核層の時代に向けて」において「中核層」は、自らの生き方を主体的に選択し、それゆえに積極的に社会を支えようとする自負と責任感をもった人と定義されている。かつての「中間層」が「上」でも「下」でもないという消極的に定義されていたのに対し、中核層は上下の階層や所属する組織を問わない。その点において、いわゆる既存のエリートとは異なり、むしろエリートを含む、より大きな層となるといえるだろう。NIRA総研で実施した中核層についてのアンケート調査結果からも、居住規模や階層・学歴にかかわらず、誰でも中核層になりうることがわかっている。
 中核層の役割の1つとして、人々を結びつけ有機的な連携をつくり出す「ネットワーカー」がある。社会・経済的な要件にかかわらず存在する中核層の「ネットワーカー」は、まさに現在の分断社会において、さまざまな人々をつなぐことができるだろう。経済のグローバル化に不安を抱き、政府へ不信感を募らせている人々の声を政策立案者へ届け、両者の溝を埋める役割を中核層に期待したい。社会が成熟した縮小時代においては、人々の合意を形成することは決して容易ではない。今こそ民主主義の発展について考えていかなければいけない。

川本茉莉(NIRA研究コーディネーター 兼 研究員)

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