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NIRA政策提言ハイライト

シニアの就業促進に向けて

NIRA政策提言ハイライト 2016/11発行

高齢者の力を生かせ
 政府の「働き方改革実現会議」が進められている。議長の安倍首相は、9月27日の第1回会議で「働き方改革は構造改革の柱になる」と意気込みを語った。同会議でとりあげるテーマは多岐に渡るが、改革の目的の一つに、高齢者や女性など、いままでの標準的な働き方では仕事に就くことが難しかった人たちの労働参加率を高めることがあげられている。
 総務省の発表によると、昨年の国勢調査の結果、大正9年(1920年)の調査開始以降初めて、わが国の総人口がマイナスに転じた。人口減少と高齢化が進むなか、労働力の確保は喫緊の課題だ。
 では、高齢者自身はどのように考えているのか。少し前の調査となるが、平成24年就業構造基本調査によると、60-64歳の64.7%、65-69歳の44.8%、70-74歳の29.3%が、働きたいと考えている。さらに、現在すでに仕事をもって働いている高齢者(60-74歳)については、8割以上の人が引き続き就業することを望んでいるという(図1)。
 高齢者がその能力や経験を生かして働ける場を増やすことは、国の経済にとっても、高齢者自身にとっても、望ましいことが分かる。

継続雇用制度は過渡的な対策
 NIRA総研では、こうした認識のもと、高齢者の就業促進における課題は何かを考察してきている。そのうち、『わたしの構想』No.9の特集「高齢者が働く社会」では、「定年」制度を巡る認識についていくつかの指摘がなされた。
 高齢者の雇用に関しては、平成25年の改正高年齢者雇用安定法により、定年が60歳の企業でも、希望者全員を65歳まで継続雇用することが義務づけられた。これは、主に年金受給開始時期の引き上げにともなう生活保障の意味合いが強いが、高齢者の雇用機会の保障として有効である。しかし、従業員が雇用延長を希望すれば全て拒むことができない状況は、個別の企業にとっては、企業体力を奪う可能性があり問題だと、八代充史慶應義塾大学教授は指摘する。今後、年金受給開始年齢がさらに引き上げになる可能性も視野に入れれば、高齢者の就業対策を企業の継続雇用に頼るだけでは、不十分であろう。
 大内伸哉神戸大学大学院教授は、定年制の意義は変容していくと述べる。定年までの雇用保障と引き替えに企業に長期的に貢献していくような、伝統的な正社員のニーズは下がっていくとともに、定年制に関係のない労働者が増えていくという。グローバル化・IT化の急速な進展のもと、労働者は今後、即戦力として働くことが求められ、実力主義へと移行していく。実力主義への移行は、体力にハンディのある高齢者にとって必ずしも容易な社会ではないものの、年齢による一律の区切りである定年制が変わっていくことは、自らの能力や経験を生かして働きたい高齢者に門戸を開いていく道でもある。

問われる仕組みづくり
 人生100年時代とも言われるようになり、かつて「高齢者」と言われた年齢でも、十分に体力・活力にあふれた人も増えた。しかし、元気なシニア層が働きたいと思っても、新しい仕事を見つけることは難しいのが現状だ。
 この問題に関連して、伊藤由希子東京学芸大学准教授は、『わたしの構想』No.20の特集「シニア世代の能力を生かせ」で、職業に関するデータベースを整備している米国の取り組みを紹介している。米国のO*NETとよばれるデータベースでは、働きたい仕事に求められるスキルや企業側のニーズ、職業訓練の機会などの各種情報をWebで提供しており、これが職を求める個人と企業とのマッチングを革命的に向上させたという。日本でもこうしたデータベースが構築されれば、シニアの就業可能性も格段に高まると提言している。
 シニアが自らの意欲によって活躍できる仕組みや基盤をどのように整えていくか、問われている。

参考:
働き方改革実現会議
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/index.html

榊麻衣子(NIRA総研研究コーディネーター・研究員)

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