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NIRA政策提言ハイライト

日本発ベンチャー企業を創出するために

NIRA政策提言ハイライト 2016/10発行

日本には世界に通用するベンチャー企業が圧倒的に少ない
 米国では、短期間に業績を拡大し、急成長を遂げる企業が次々と生まれている。グーグル、アマゾン、フェイスブックといった大企業がよく知られるが、すでに上場を果たしたこれらの企業に続き、未上場ながら企業価値10億ドル以上の評価を受けた「ユニコーン企業」と呼ばれるベンチャー企業が誕生するペースは全く衰えていない。2015年のユニコーン企業価値ランキングを見ても、上位10社の内7社が米国企業で占められている(下記図表参照)。
 ひるがえって日本の状況をみると、LINE、DMM、そして最近ではメルカリといった急成長企業が現れつつあるものの、世界的に名を馳せる企業数は米国に比べ圧倒的に少ない。
 景気低迷が続くなか、政府は戦後最大の名目GDP600兆円という目標を掲げている。その成否のカギを握るのは、めまぐるしく変化する環境に機動的に対応し、急成長を果たすベンチャー企業の創出だ、とも言われている。

政府によるベンチャー企業育成の後押し
 こうした現状を踏まえ、政府もベンチャー企業を後押しする取り組みを本格化し始めている。2016年4月、内閣の日本経済再生本部(本部長:安部晋三総理大臣)は、世界市場に挑戦する日本発ベンチャー企業が継続して生まれる環境構築を目指し、「ベンチャー・チャレンジ2020」を決定した。アベノミクス第三の矢である「日本再興戦略2016」のイノベーション創出策をさらに具体化し、これまで各省庁で別個に実施されていたベンチャー支援策を一体的に動かすための、いわばロードマップともいうべきものだ。
 省庁横断的な政府機関コンソーシアムと、弁護士や民間人材で構成するアドバイザリーボードの設置、また優れた水準を誇る日本の大学や学術機関の研究を、ビジネスに結び付けていくための制度改革や産学官連携の強化を盛り込んだものだ。そしてこのプランが目指すのは、起業家、投資家、大学、金融機関、政府機関などが結びつき、企業の創出~成熟~再生の過程を循環させる、エコシステムの構築である。

急成長企業を増やすための条件とは
 米国シリコンバレーにはすでにこの様なエコシステムがあり、有機的に循環している。だからこそ、ベンチャー企業が継続的に輩出されているといえる。NIRA総研オピニオンペーパーNo.21「急成長企業を創出せよ」で、柳川(NIRA総研理事/東京大学教授)は、エコシステムの好循環の土台となっているのは「イノベーションインフラ」だ、と指摘している。これは、空港や道路といったハード面でのインフラではなく、イノベーションを促進し、生産性を飛躍的に向上させる、ソフト面のインフラを指す。たとえば、アマゾンのクラウドサービスやフェイスブックのSNSなどだ。彼らはインターネットという既存のインフラを最大限に活用し、そこにクラウドによるスタートアップコストの低減や、インタラクティブな情報交換、といった付加価値を提供した。これを活用して生まれた新たなベンチャー企業が、そのインフラをさらに改善し、また新たなインフラを構築するという好循環が生まれている、と柳川は分析する。ブロックチェーンや人工知能といった技術も、これまでのビジネスのあり方を劇的に変える可能性を秘めており、まさにイノベーションインフラとなり得るものといえる。(NIRA総研では近刊のオピニオンペーパーで、ブロックチェーンと人工知能についても取り上げる予定。ご参照されたい。)
 日本においても、シリコンバレーのイノベーションインフラを活用していく事はもとより、技術と人材が自然と集まり好循環を生む「場」ともいうべきインフラを自ら作り出し、整備していく事が必要だろう。

ベンチャー・チャレンジ2020概要
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seicho_senryaku2013.html#c20

林 祐司(NIRA総研 主任研究員)

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