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NIRA政策提言ハイライト

電力市場の競争条件を左右する送配電ネットワーク接続ルール

NIRA政策提言ハイライト 2016/09発行

電力システム改革第3段階:発送電分離
 本年4月の小売全面自由化により、第5次電力システム改革は第2段階まで進展した。今夏からは、いよいよ第3段階の発送電分離に関する議論、とりわけ、送配電ネットワーク(以下「送配電網」)の利用ルールの整備に関する議論が本格化してきた (注1)
 本年9月、送配電網の利用料の一部を消費地からの距離に応じて発電事業者にも負担させる制度の検討が、経済産業省で開始された (注2) 。しかし、送配電網の接続ルールを検討する際は、電源側だけを切り離して検討するのでは不十分である。では、どのような検討が必要なのか、整理してみたい。

地点料金制が電力の地産地消を促す
 送配電網の利用料金制度に関しては、NIRA政策レビューNo57「再生可能エネルギーの将来性」において八田達夫アジア成長研究所所長(当時、学習院大学経済学部特別客員教授)が主張する送電の地点料金制が参考となる。例えば、都市部などの大量電力消費地に近い地域に電源を設置した場合、長距離送電を必要としないので利用料金を安く設定する (注3) 。逆に、消費地から離れた地方に電源を設置した場合は、長距離送電を余儀なくされるため高い利用料金とする。この制度は需要側にも適用することが前提であり、電源に近い地域での需要側の利用料を安くし、電源から遠い地域での利用料を高くすべきとしている。この時、料金設定の基準は、消費地からの距離だけではなく、地域ごとの発電と需要のバランスも考慮すべきであろう。
 現状の日本に目を移すと、火力発電所や原子力発電所、水力発電所など大型の電源は、消費地である都市部から遠く離れた場所に設置されているケースが多い。消費地まで長い距離、大量の電力を送電することとなるため、大規模な送電設備が必要となり送電ロスも多いという問題が生じている。これに対して発電側・需要側の双方に地点料金制が導入されれば、消費地に近い都市部での電源開発とともに、電源に近い地域での大量電力消費施設(工場など)の立地が促され、電力の地産地消が促進されることなる。送電における無駄が減少するだけでなく、電源立地地域の活性化につながる可能性がある。

日本の電力システムの将来ビジョンを見据えた議論を
 他方で、消費地からの距離に応じた料金制度(上述の地点料金制も含む)では、結果として、電力産業での温室効果ガス削減の動きを鈍化させる懸念もはらむ。
 例えば、風力発電や地熱発電などの自然エネルギーは適地が地方に集中している。現行制度では、新規電源開発者は、既存の送配電網へ接続するためのインフラ整備費用も負担しなければならない。これに加えて、遠隔地での送配電網利用料が高くなれば、これら電源の開発が進まなくなる可能性がある。その一方で、東京湾岸部に立地している既存のガス火力や石炭火力などの電源は有利となり、これら設備への依存度が高まる可能性がある。
 送配電網の利用ルールは、全電源、全需要者に影響を及ぼす重要なものであり、その設定次第では電力市場の競争条件を大きく変え得るものである。日本にとって必要な電力システムの将来ビジョンとは何かを見据えた上で、包括的にルールを見直す必要がある。

(注1)例えば、消費者庁は本年7月「電力託送料金に関する調査会報告書」を作成した。
(注2)第10回経済産業省電力・ガス取引監視等委員会制度設計専門会合(2016年9月2日開催)
(注3)八田は、場合によっては消費地の電源に対するマイナスの利用料、つまり、補助金の交付もあり得るとしている。なお、現行の制度には、需要地近接性評価割引制度というものもある。

西山裕也(NIRA総研 主任研究員)

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