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NIRA政策提言ハイライト

異分野との連携が原動力に

NIRA政策提言ハイライト 2016/08発行

異分野連携が生む新規参入の可能性
 旅行会社やタクシー会社に自宅と医療・介護関連施設との間の定額送迎サービスへの参入を促すため、経済産業省と観光庁が旅行業法を見直すことが報じられた。これにより、自宅と当該施設の送迎が「ツアー旅行」に位置づけられ、利用者は事故の際に旅行業法に基づく補償を受けることが可能となる。一方で、旅行会社にとっては、新規事業の展開が考えられるという。
 例えば、新しいサービスを通所介護(デイサービス)や通所リハビリ(デイケア)の送迎に応用することも想定されるであろう。現状では介護士が自宅から施設までの移動の際のドライバーを兼ねることが多いようである。今回の見直しがどの程度の意義を持つのかまでは定かではないが、旅行会社とタクシー会社という異業種の連携から新規事業の発展を促すという取組は今後の地域経済に大いに参考となる。

世界で進む異分野との連携
 近年、異分野の連携が成長の原動力になると考えられており、その重要性が盛んに議論されている。NIRA研究報告書『選べる広域連携』でも、長野県飯田市を事例に異なる企業が連携して互いの技術を補完し合うことで地域経済の活性化につながる可能性が示されている。
 だが、「GEグローバル・イノベーション・バロメーター2016」の調査結果によれば、「協業によるイノベーション活動から生じる売上や利益は増加していますか」の問いに、「Yes」と回答した日本企業は54%と調査参加国23か国中最も低い(図参照)。世界の平均水準は2014年調査の64%から77%までに伸びを示しているが、日本の水準にほとんど変化はない。調査参加国の企業が協業による効果を実感する一方で、日本企業の多くは異分野や他企業との連携に意義を見出せていない傾向がうかがえる。日本の自前主義が足かせとなっているかもしれない。

自己完結的発想の見直し
 こうした自前主義を志向する行動は企業だけではない。行政や医療・介護などにも共通する課題であり、一組織内完結の発想が仕組みの転換の弊害となっている。三品和広神戸大学大学院経営学研究科教授もNIRAわたしの構想No.1「構想力に科学が挑む」の中で、自己完結しようとする「こだわり」を捨てる必要性を唱え、外部との連携が成長の切り札になることを指摘している。
 環境変化のスピードが速く、柔軟性が求められる時代には、異なる組織とのつながりがなければ、競争力、サービスの量や質を維持することは極めて難しいと考えられる。とりわけ、小さな地域で活動する企業や行政は、現状と同様のサービス水準を維持する場合でも、単体でその持続性を確保することには限界がある。今後は、これまでつながりを意識したことのなかった異業種、異分野との連携が生き残りの鍵となる。

参考:
NIRA研究報告書(2014)『選べる広域連携
NIRAわたしの構想No.1(2013)「構想力で科学に挑む

豊田奈穂(NIRA総研 主任研究員)

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