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NIRA政策提言ハイライト

科学技術教育はどうあるべきか

NIRA政策提言ハイライト 2016/05発行

低迷する日本の技術革新力
 世界知的所有権機関(WIPO)は、米コーネル大学や仏INSEADと協力し、毎年「技術革新力ランキング(Global Innovation Index)」を作成・公表している。このランキングに基づくと、日本は2007年には4位であったが、その後2012年にかけて急激に順位を落とした。2013年以降は緩やかな上昇傾向にあるが、いまだ20位前後にとどまっている。近年上位をキープし続けているスイスやスウェーデンはもとより、一度は順位を下げたものの回復を見せている米国や英国などにも大きく水をあけられてしまっている状況だ。技術革新力の低迷は「科学技術立国」の根幹を揺るがすものである。この状況を抜本的に変えるには、初等・中等教育における科学技術教育を見直す必要があるだろう。




イノベーションの担い手育成が課題に
 本年2月に政府がまとめた「子供・若者育成支援推進大綱」(以下、「大綱」)では、科学技術や情報通信技術を活用できる人材の育成が重点課題に盛り込まれた。また、伊勢志摩サミットに先立ち5月14日~15日に開催されたG7教育大臣会合でも、情報通信技術や理工系分野における教育を見直すことが共同宣言に盛り込まれた。日本経済が低迷する中、イノベーションの担い手となり、国際社会の中で競争力をもった次世代人材の育成は、安倍政権が取り組む成長戦略にも欠かせないといえる。

時代の変化に対応した教育改革を
 では、中学・高校における科学技術教育のあり方をどうするべきなのだろうか。この問題に対し、NIRAわたしの構想No.10「中学・高校の科学技術教育」(2015年4月)では、開始から10年あまりが経過した「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」の取組を含め、多様な立場の有識者から話を伺った。大綱でも拡充支援が挙げられているSSHについて、森本信也・横浜国立大学教授は、その成果を評価しながらも、指定校とそうでない学校の2極化が大きな問題であり、SSHの成果を広く共有して、科学技術の基本知識を備えた市民を育成するべきと指摘する。また、門田和雄・宮城教育大学准教授や清水亮・ユビキタスエンターテインメント(現UEI)代表取締役社長兼CEOは、ものづくりやプログラミングなど、社会で実際に有用となる教育をもっと重視すべきであると述べている。
 情報化や人工知能の発達により、大きなパラダイムシフトが起きようとしている中、従来のままの理科や数学の教育を続けていたら、日本は国際社会から取り残されていってしまうだろう。時代の変化に対応して何をどのように教えるべきかを見直し、日本全体の科学技術力の底上げにつながるような教育改革に向けた議論が進むことを期待したい。

参考文献
Kurashiki Declaration, G7 Kurashiki Education Ministers’ Meeting in Okayama, 14-15 May 2016(G7倉敷教育大臣会合倉敷宣言)

川本茉莉(NIRA研究コーディネーター 兼 研究員

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