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NIRA政策提言ハイライト

金融サービスに大変革をもたらすフィンテック

NIRA政策提言ハイライト 2016/03発行

フィンテックは一時的なブームにすぎないのか
 フィンテックとは「ファイナンス」と「テクノロジー」を掛け合わせてつくられた造語で、まだ歴史も浅く多義的な解釈が可能な言葉だ。この言葉は、すでに広く世の中に浸透し頻繁に使われるようになった。新聞紙面では毎日のようにフィンテック関連の記事が掲載され、経済誌やテレビでも「フィンテック狂騒曲」「金融の破壊者」といった、過激なキャッチフレーズが飛び交っている。こうした動きを一過性の単なるブームととらえ、いずれ熱は冷めてしまうだろうという向きもある。だが、フィンテックのもつ意義を正しく理解しないままその言葉だけが一人歩きしてしまうと、本質を見誤ってしまう恐れがあるのではないだろうか。

現実に起きつつある変革の波
 NIRAではこうした問題意識を出発点として、フィンテックを正しく理解しその本質的な意義を広く普及させようと情報発信を行ってきた。2015年9月に発行した「わたしの構想No15『金融大変革、FinTech』」では、これまでフィンテックを主導してきた内外の事業者、研究者、メガバンク幹部など5人の識者に、フィンテックに対するそれぞれの見解を聞いた。
 インタビューをした識者全員に共通していたのは、技術革新のスピードは非常に速く、金融業界は大変革時代に入ったという認識である。本号の企画を担当した翁(NIRA理事)も「フィンテックは多様な担い手からさまざまなサービスが競争的に提供されることにより、金融業の概念を大きく変え、われわれのライフスタイルを便利に変える可能性を秘めた動きだ」と指摘している。
 こうした大変革の到来を予感させる背景には、グーグルやフェイスブックなどの膨大な数の利用者と繋がるIT企業が金融事業に乗り出してきた、という事実がある。一銀行の顧客数と比較しても桁違いに多数の利用者が、グーグルのサイトから送金をすることができるようになるかもしれない。実際にAppleは、自社製品であるiPhone所有者に向けApple Payという決済サービスを始めている。自社の顧客基盤の優位性を金融サービスに活かし、利用者は爆発的に増加し続けている。こうした事例からも、識者達が指摘している大変革がリアルなものとして実感できるのではないだろうか。

「日本発フィンテック」へ向けた課題
 また、こうした見解の裏付けに加え、フィンテック先進国の動向や安全面での課題など、フィンテックの基礎的な知識を分かりやすく伝えることを意図し、前述の「金融大変革、FintTech」と日経ゼミナールでNIRAが連載を担当した「フィンテックを知る」(全10回)を合冊し、フィンテックの小冊子「わたしの構想『金融大変革、FinTech』」を2016年2月に発行した。
 その中でNIRAは、日本がこの金融大変革の波に押し流されないために、人材育成、国際戦略、起業しやすい環境作り、の3つのポイントが重要だと指摘している。社会のインフラといわれる金融ビジネスにおいて、日本が世界から孤立しガラパゴス化するような事態は避けなければならない。日本の金融は、世界的にみても技術力に優れており、安全に対する意識も極めて高い。むしろこういった強みを世界へ普及させていくべきだろう。




林 祐司 NIRA主任研究員

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