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NIRA政策提言ハイライト

公共サービス取捨選択の時代

NIRA政策提言ハイライト 2016/01発行

水道管の更新遅れる
 先月末に開催された厚生労働省の検討会資料には、全国の水道管総延長65万4,000キロのうち、法定耐用年数40年を過ぎた設備が2013年度に10%強に達したことが報告されていた。同年度には水道管の腐食による破損などの管路事故が約2万5,000件も発生している。老朽化が進行しているにも関わらず、同年度の管路更新率はわずか0.79%にとどまり、すべてを更新するには約130年を要することが見込まれている。
 こうした非現実的な期間が示されるほど設備更新が進まない一因として、人口減少やエコ対策が進んだことで料金収入が減少したことが指摘されている。その結果、1970年代に一斉に整備された設備が更新期に差し掛かっても、その需要を満たす十分な資金を確保することが難しいという。

人口減少と財・サービスの関係
 NIRA研究報告書『選べる広域連携』では、市町村における1人あたりの歳出を最小化することのできる人口規模を7万人程度と推計している(図参照)。これは、1市町村の人口が7万人以下に縮小していくほど、財・サービスの維持が非効率な状態に陥り、供給の持続可能性が低下することを意味している。
 今後、長期的な人口減少が避けられない状況下においては、さまざまな財やサービスが現在の供給システムのままで存続し続けることができない可能性が高まる。これまで全国のどこに住んでいても、同じようにサービスを享受できることが当たり前と認識されてきたが、今後、水道設備に限らず、サービスの維持が困難となる地域が増加することになると考えられる。

仕組みの見直し
 こうした社会経済環境の変化に対応するため、NIRAわたしの構想No.17「岐路に立つユニバーサルサービス」で松村敏弘東京大学社会科学研究所教授は、最低限のサービス内容や供給コストを踏まえてサービスの供給地域について再考し、拠点地域への移住を誘導することが必要であると指摘する。
 同様に、中川雅之日本大学経済学部教授も、維持費が一定の限度を超え、費用が便益を上回った段階でサービスの供給を止め、受益者に存続が可能な地域への移住を求めることも考えなければならないとの認識を示している。

現在世代と将来世代
 人口減少と著しい高齢化の影響が顕在化しつつある中で、識者らが指摘するように、さまざまな場面で私たちは何を残し、何をあきらめるのかの選択を迫られることになる。私たち現在世代の短期的利益と長期的な地域としての方向性は必ずしも一致しないため、それは極めて重い課題となる。しかし、選択の結果が地域の将来に何をもたらすのか、理想の未来像から現在を眺めるバックキャスティングという未来学の手法に学び、破綻が現実になる前に難題を克服したい。



豊田奈穂 NIRA主任研究員

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