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NIRA政策提言ハイライト

社会保障改革と消費増税

NIRA政策提言ハイライト 2015/11発行

「社会保障改革しか道はない」
 少子高齢化の加速に伴い社会保障需要が拡大していく中、社会保障制度の持続可能性を確保する上で、政府部門の財政健全化は極めて重要な課題である。総合研究開発機構(NIRA)では、昨年2月より財政・社会保障制度に関する研究会を立ち上げ、この問題について取り組んできた。その成果は3つのオピニオンペーパー(第1弾第2弾第3弾)及び研究報告書『社会保障改革しか道はない』として発出された。
 同研究会は、財政健全化を達成するには、社会保障支出の見直しが不可欠だとする。非社会保障支出の削減余地はごく小さいからである。歳出面では、社会保障における過剰な支出について削減や効率化を求める。一方、歳入面では、社会保障財源の安定的な確保のため、そして世代間の公平性に留意する観点から、消費税をその財源とすべきだとしている。もちろん、社会保障改革は財政健全化のためだけに行われるものではなく、現行の社会保障制度が欠いている効率性や公平性をより考慮するためにもなされるべきものである。

「困っていない人」から「困っている人」へ
 こうした観点から社会保障改革の視点として同研究会が強調したポイントは、本当に「困っている人」に対して財政移転やサポートが行われるようにすべきだということである。このことは当然の命題のように思えるが、現状は必ずしもそうではない。現行制度は年齢や世代を基準として負担と給付の仕組みを設定しており、そのために「困っていない人」にも社会保障給付がなされている反面、本当に「困っている人」への支援が不十分な面がある。本来社会保障で助けられるべき「困っている人」に手厚い支援が行き届くよう、図のように財政移転の方向性を転換し、世代間の公平性を高めることが必要となる。そのためには、消費税を社会保障財源とすることが望ましいとしている。

簡素・公平・中立
 消費税は、2017年4月より、税率10%へと増税される予定である。目下の政治課題は、食品などにかかる税率を低めに設定する軽減税率をどうするか、ということのようだ。同研究会の研究報告書は、軽減税率について、「低所得者の負担軽減対策としては効果が低いこと、税収が減少しさらなる増税が必要となること、などから反対である」とした。すなわち、軽減税率は、「困っている人」の負担を軽減する効果が見込み難い。そればかりか、「困っていない人」の方が恩恵を受けやすいという分析もある。
 当然ながら軽減した分だけ税収は落ち込み、社会保障の税源は減ってしまう。さらには、何を軽減税率の対象品目とするかをめぐって、各種団体を巻き込んだ消費税制の政治化が生じることは容易に予想される。手続き面でのコストも多大となろう。かつて消費税導入以前にあった物品税では、何をその課税対象となる贅沢品とみなすか、という「線引き」の問題が常にまとわりついた。この過去の教訓はもっと参考にされるべきであろう。
 良く知られるように、税制には、「簡素・公平・中立」という基本的な三原則がある。軽減税率の導入は、果たしてこれにあてはまると言えるのか。基本原則に立ち返って考えてみる必要がある。

飯塚俊太郎 NIRA研究員

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