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NIRA政策提言ハイライト

人工知能は人類の脅威か

NIRA政策提言ハイライト 2015/10発行

自律型ロボット兵器の開発禁止の動き
 7月末にアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれた国際人工知能学会で、自律型ロボット兵器の開発禁止を訴える公開書簡が公表された。自律型ロボット兵器は、人間が介在することなく、ロボットが標的を選択し、攻撃することのできる兵器だ。現在、アメリカ、イスラエル、イギリスなどで開発が進んでいるが、自律型のロボット兵器が完成すれば、ロボット自身の判断によって人が殺される事態になる。
 先の書簡は、こうした事態に危機感を抱いたスティーブン・ホーキング博士、テスラ・モーターズCEOのイーロン・マスク氏、アップル創業者のスティーヴ・ウォズニアック氏ら世界各国の学者、研究者、著名人によって提起されたもので、公開状を支持する研究者の数は2万人を超えた。11月に開かれる国連会議では、殺人ロボットの禁止を求めるかどうかについて各国が話し合う予定となっている。

人工知能の出現で近代化は終わるのか
 弊機構の公文俊平上席客員研究員(多摩大学教授)が先日公表したNIRA研究報告書『『プラットフォーム化の21世紀と新文明への兆し』では、人工知能の出現がこれまでの近代の流れを大きく変える可能性があることを示した。成長の富を巡って人間が覇権を争っていた近代化が、人工頭脳の発展でどのような挑戦を受けているのかについて、公文氏は2つのシナリオを描いて問題提起を行っている。
 一つは、近代化が人工頭脳と調和しつつさらに発展をするという近代化シナリオである。ロボットが働くことでうみだされる富を人間の間で分配しつつ、人類は近代化の繁栄を謳歌(おうか)する。もう一つは、善と悪の両義性をもつ人工頭脳に、人類の覇権が奪われる可能性があるというシナリオである。近代化の終焉とともに新しい文明が始まり、その行方は、善と悪をうまく使いこなすことが人類にできるかどうかにかかっている。人工頭脳を搭載した無人機は、農薬の散布や人命の救助など人類に親和的な使い方もあるが、人を支配することになれば人類を危機に追いやることとなろう。

情報社会の基本法の制定を
 ホーキング博士やイーロン・マスク氏による運動は、まさに後者の新文明シナリオに対する予防的行動をとることにより、前者の近代化シナリオを実現させる動きだと理解することもできるだろう。2つのシナリオのどちらを選択するかは人によって意見が分かれるだろうが、いずれの場合であっても、人工知能の開発が倫理やリスクの観点から慎重に議論すべき課題だと認識している点では、意見はほぼ一致している。
 では、人工知能の発達を人類の繁栄に貢献させていくためには、どうすべきか。同報告書では、「情報社会の基本法」を制定すべきだと提言している。これまでの近代化の過程で成立してきた法体系を今一度考え直し、情報社会にふさわしいものに作りなおすことによって人類と親和性の高い人工知能の開発を目指すことは極めて重要な課題といえる。
 折しも、先日、ロボット法学会の設立の準備が始まったという記事を目にした(10月13日、日経テクノロジーOnline)。日本の人工知能社会の到来を控えて、本格的な議論がはじまる。近代化の流れのなかで人工知能をどう位置づけ、人類としてどう対峙(たいじ)していくべきなのか。人工知能に関わっている日本の研究者による積極的な意見発信を期待する。



神田玲子 NIRA理事 兼 研究調査部長

(参考)NIRA研究報告書『プラットフォーム化の21世紀と新文明への兆し』(2015年10月)

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