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NIRA政策提言ハイライト

世代を越えて医療保険制度を守るには

NIRA政策提言ハイライト 2015/07発行

社会保障制度を次世代に引き継ぐ
2015年6月30日、政府は経済財政諮問会議での答申を経て、「経済財政運営と改革の基本方針2015-経済再生なくして財政健全化なし-」を閣議決定した。その中には、社会保障・税一体改革を確実に進めつつ、世界に冠たる国民皆保険・皆年金を維持し、次世代へ引き渡すことを目指した改革を行うことが掲げられた。

伸びる医療費
わが国の社会保障給付費は、1990年に国民所得総額の13.6%を超え、その後、2014年(予算ベース)には31.1%を占めるまでに拡大している(図参照)。内訳をみると、給付費総額115.2兆円の約50%は年金として給付されているが、医療給付費も40兆円を目前にしている。こうした現行制度下においても、一般に、診療や薬剤に関する患者の自己負担率は一律3割とされ、極めて軽度な治療から最先端の高度治療まで、同水準の保険でカバーしている。今後の趨勢を見据えれば、現行のままで医療保険制度の持続性を担保することは難しく、制度が長期的に存続可能となる仕組みへの改編が急務である。その具体的な視点として、NIRAわたしの構想No.12「本腰の医療改革」では、薬剤や治療の効果に対する適切な評価と保険の適用範囲の見直しが鍵となることを指摘している。

医療や薬剤の評価と保険料率
その中で土屋了介神奈川県立病院機構理事長は、高齢化、医療技術の高度化が進む現状下において医療費の一定の増加はやむを得ないとしても、学術的検証のもとで確立された治療法にのみ保険を適用するといったメリハリをつける必要性を指摘している。また、同号で川渕孝一東京医科歯科大学大学院教授は、薬剤の有効性を評価し、①一般薬品化し、市販する薬、②引き続き保険を適用しつつも、自己負担率を引き上げる薬、③自己負担率を1割に下げ、開発者が自由に価格を設定できる有効性・安全性に優れ、画期的な新薬、に分類して保険料率を弾力化することを提示している。

国民的議論と合意形成の時期
現在行われている議論は決して目新しいものではないが、医療は個人の健康や生活に直結するサービスであるために、一方的な負担の増加や利益の剥奪といった形では合意形成を図ることができない。しかし、政府が掲げる医療保険制度を次世代に引き継ぐという共通認識のもとで、これを具体的に昇華させていくことができなければ、遠い将来のみならず、現世代の私たち自身も制度の恩恵を失うことになりかねない。団塊世代が後期高齢期に入る2025年には、医療・福祉サービスの需要が急速に増加することが見込まれている。それぞれの立場から利己的行動を超越した水準で国民的議論と合意形成を急ぐ時期が来ているのではないだろうか。


豊田 奈穂 NIRA主任研究員

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