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NIRA政策提言ハイライト

財政と地方の問題からみた学校

NIRA政策提言ハイライト 2014/12発行

財政状況の悪化や少子化の中で、学校のあり方も変容を迫られている。今回の「政策提言ハイライト」では、財政と地方の問題に関するNIRAのこれまでの研究成果をもとに、学校の学級規模と学校規模(学校統廃合)について考えてみたい。

小学校の学級規模
 公立小学校の学級規模は、40人標準と法律で定められているが、小学1年生については、2011年度より35人学級制が導入された。だが、先般、財務省が、財政制度等審議会にて、その少人数化の効果が不明であるとし、厳しい財政状況に鑑みて小1も40人学級に戻すべきと提示した。このことは各方面で話題となり、例えば、財政の論理に傾きすぎだという反論が出された。また、諸外国に比べれば35人でもまだ規模が大きすぎるという意見も見られた。
 財政状況の改善は極めて重要な課題であり、政策効果に係る費用対効果の分析も大切だが、そもそも日本の教育に対する公財政支出が、先進諸外国よりも低い水準に留まることはもっと注目されて良い(図参照)。公財政は、むしろ高齢化とともに拡大する社会保障費によって逼迫している。こうした状況の背後にあるとされるのが、「シルバー民主主義」だ。これは、人口構造の高齢化に伴い高齢者の政治的影響力が相対的に高まることで、高齢者の負担の拡大や利益の縮小を伴う政治的決定や制度変更がなされにくくなり、資源配分が高齢者に偏るようになるという考え方である。NIRAでは、シルバー民主主義について、NIRAモノグラフ「社会保障制度を通じた世代間利害対立の克服」やNIRA研究報告書「国債に依存した社会保障からの脱却」等にて研究成果を公表してきた。

少子化と学校統廃合
 さらに、学級規模から学校規模に目を転じると、全国の多くの地域では少子化が進み、学校規模の縮小、果ては統廃合に直面している。全国の児童・生徒数は減少し、学校数も漸減傾向にある。一方で、大都市部を中心に、大規模マンション建設などを契機に、にわかに校舎のキャパシティが不足し、急な増改築を余儀なくされる例や、学校の新設に至るケースも見られる。NIRA研究報告書「選べる広域連携」の冒頭に論じられているように、人口減少の状況が地域によって全く異なるのと同様に、学校の規模や統廃合を巡る問題も、地域によって様々な様相を見せる。子供の通学可能範囲や通学路の状況などが統廃合時の論点になることも多く、財政面だけでなく、それぞれの地域の実情に合った対策が必要となる。

学校統廃合と地域の担い手づくり
 もちろん、財政的な観点も無視できない。NIRA研究報告書「選べる広域連携」では、少子化に直面した市町村が学校の統廃合を決断する際、当該市町村自身が、統廃合の財政的メリットを享受できる仕組みに改めることが提言されている。今後さらに児童・生徒数が減少していく中で、学校規模の過小化の進行が予測されるため、学校の設置者である地元の市町村は、統廃合の決断を一層余儀なくされることになる。しかしながら、現状では、様々な制度との関係から、統廃合の財政的メリットのほとんどは都道府県や国に生じ、学校の設置者である市町村にとってはごく小さい。こうした点を考慮し、同提言は、統廃合によって生まれる財源を市町村に帰着させるように諸制度を改めるとともに、市町村がその財源をもとに地域に根差した独自の教育的取り組みを進められるようにすることが、地域の担い手づくりの視点から重要であるとしている。




飯塚俊太郎 NIRA研究員

<関連頁>
・「社会保障制度を通じた世代間利害対立の克服」(NIRAモノグラフ/2012年7月) 
・「国債に依存した社会保障からの脱却」(NIRA研究報告書/2013年2月) 
・「選べる広域連携」(NIRA研究報告書/2014年4月) 

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