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NIRA政策提言ハイライト

日本の財政規律を実現するには

NIRA政策提言ハイライト 2014/10発行

悪化する景気
 政府は、来年10月に消費税率を8%から10%へ引き上げることの是非を本年12月に公表される7-9月期QE(四半期別GDP速報)の改定値の結果を見て判断することとしている。
 一方、先日公表された月例経済報告では、4月の消費税率引き上げ後に個人消費が低迷し、生産活動の落ち込みが広がっていることを反映して、景気の基調判断を「一部に弱さもみられる」から、「このところ弱さがみられる」に引き下げた。これにより2ヶ月連続で景気判断を下方修正したことになる。

増える消費税引き上げ反対の声
 消費税率の引き上げは当初想定外の景気への悪影響をもたらした形であるが、今後の景気の見通しに関しては、専門家の間でも、回復・悪化と判断が分かれている。
 このような景気の悪化を受け、消費税再増税に関して、全国紙の世論調査でも反対が賛成を大きく上回っているし、安倍晋三首相の経済ブレーンで内閣官房参与を務める本田悦朗氏も「最低でも2017年4月1日まで延期すべき」と主張している。

増え続ける政府の借金
 それでは、日本財政は消費税率再引き上げを中止したり1年半も延期できる状態にあるのだろうか。内閣府の試算「中長期の経済財政に関する試算」からは、消費税率の5%から8%への引き上げでも日本財政は赤字依存体質からの脱却はできていないし、10%に引き上げても2020年度にも依然11兆円のプライマリー赤字が発生することが分かる(図)。しかもこの結果は日本の景気が最大限に良いと仮定した結果であることを忘れてはいけない。つまり、今後消費税率を10%に引き上げ、かつ日本経済が名目3%成長を続けたとしても、日本の財政規律を守ることができない。景気回復を待っていては日本財政の出血はいっそうひどくなるばかりだ。欧州にはリーマン・ショックの最中にあっても付加価値税率を引き上げた国も存在するということを考えると、日本は財政規律に関する考え方が「甘い」ようにも感じる。

日本の財政規律を実現するには
 わたしの構想No.4「今こそ問う、日本の財政規律」では、5名の識者が日本の財政規律を実現するにはどうすればよいかについて提言している。その中で、加藤淳子東京大学大学院法学政治学研究科教授は、日本は低負担であるがゆえに「歳出に対する国民の監視がきかない状況で財政の悪化が長期にわたり続き、近年はかえって危機感は薄れつつある」と警告しているし、宮本太郎中央大学法学部教授は「日本では、財政規模が小さいが故に、かえって納税者の財政リテラシー(理解し判断する能力)が育まれていない」と指摘している。
 経済成長依存の甘い誘惑を断ち、受益と負担のバランスを回復することが日本の財政規律を維持する第一歩となるであろう。




島澤諭 NIRA主任研究員

<関連頁>
・わたしの構想No.4「今こそ問う、日本の財政規律」(NIRA研究報告書/2014年7月)

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