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NIRA政策提言ハイライト

都市縮小の時代へ

NIRA政策提言ハイライト 2014/07発行

構造の転換期
 今国会において、住宅や医療・福祉施設、商業施設など、都市機能の集約化を示した「改正都市再生特別措置法」が可決され、来月施行される。これまで病院や大学等の公益施設は建替えや拡張を期に郊外へ移転することが一般的であったが、ここに来て国は方針転換の動きを加速させた。背景には、著しい高齢化、人口減少が現実味を帯びる中、分散化した都市構造の再構築が避けられない現状がある。低密度に形成された地方都市では高齢者が分散して居住し、介護サービスの提供時間より移動時間の方が長いといった問題が既にある。

小さな市町村でのサービス供給
 直ちに介護をはじめ生活関連サービスの効率性が悪化し、それらの供給体制が崩壊するということではないかもしれないが、人口成長を前提とした都市構造では立ち行かなくなることに疑念の余地はない。既存研究によれば、1人当たりの歳出を最少にする市町村の人口規模は12万~30万人程度とされている。だが、2035年には12万人未満の市町村が89%を占め、とりわけ5,000人未満の増加が予測される(図参照)。今後、効率的な財政運営が可能な水準を下回る自治体が多数を占めることから、高密度化など都市の持続可能性を確保する取組みが必要となる。

都市機能の集積
 NIRA研究報告書『老いる都市と医療を再生する』では、サービスの供給エリアや配置を定めた「機能再配置型地区計画」のもとでの集約化の重要性を提言したが、今回の改正では市町村がまちの中心部を決め、施設の誘導区域が規定できるようになる。具体的には、「都市機能誘導区域」に容積率の緩和や税優遇、補助金により医療・福祉、商業等の施設の立地を促す。また、「居住誘導区域」に住居を集め、人口密度の維持を図る。いずれも区域外の開発に一定の歯止めをかけ、緩やかにコンパクト化を目指す。

合意形成
 都市エリアの縮小では、現在の利用者が空間や施設を制限されることになり、不利益を被るケースが確実に生じる。NIRA研究報告書『選べる広域連携』にあるように、関係者の利害調整に関しては、都市の拡大はプラスの便益をもたらすためそれほど難しいことではなかったかもしれないが、集約化は困難を極める。そのため、実施期間を明確にし、議会、行政、住民等が長期的な都市のビジョンを共有することが不可欠である。さらに、コンパクトシティの代表格となった富山市が徹底して貫いてきたように、全ての人がそれにコミットしていくことが実現のカギとなる。


豊田奈穂 NIRA主任研究員



<関連頁>
・「選べる広域連携-自治体による戦略的パートナー選択の時代へ-」(NIRA研究報告書/2014年4月)
・「老いる都市と医療を再生する-まちなか集積医療の実現策の提示-」(NIRA研究報告書/2012年1月)

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