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NIRA政策提言ハイライト

日本の「強み」を維持できる雇用システムを

NIRA政策提言ハイライト 2014/02発行

情報技術の進歩によってホワイトカラーが不要になる
 情報技術は、日々進歩している。これまで、日本では「失われた20年間」と閉塞感ばかりが強調されてきたが、その間も、情報技術は進歩を続け、気がつくと、私たちはデジタル機器に囲まれて暮らしている。家庭、職場、公共の場で、PCやスマートフォンの画面を眺めている姿は共通の風景となった。
 そんな中、1月18日付けのイギリスのエコノミスト誌は、「今日の技術の進展が職場に何をもたらすか」という特集記事を組んだ。そこで引用されているオックスフォード大学のフライとオズボーンの調査結果によると、現在の職業の47%は、20年後にはコンピューター化されてしまう危機にあるという。たとえば、会計士、販売員、法律事務など多くのホワイトカラーの仕事が消えてしまうと予測している(図表)。
 もし、彼らがいうとおり、現在の約半分の職業が消滅してしまうならば、それは極めて深刻な問題だ。景気変動や産業構造の転換であれば、企業や産業を移動すれば同様の職が確保できたかもしれない。事務系の職業の人は別の企業や産業の事務職として働くことは可能だ。しかし、技術によって人間の頭脳そのものが代替されてしまうとすれば、それまで従事していた職業、たとえば事務系の仕事が労働市場から消えてしまうことを意味する。そうなれば、働く側としては、技術では容易に代替できない分野で、自分の技能や能力を生かしていく方法しかない。
 それは、これまでとは全く違った職業で、自分自身を時代のニーズに合わせて大胆に適応させていくことを意味する。

働く人の2つの自律
 もっとも現実には、職場への変化は突如起こるものではなく、少しずつ生じるものだろう。NIRAの「働く人の自律を考える-会社人間という殻を打ち破れるか-」は、そうした社会の変化に対応して、働き方を変える必要があることを指摘した。その巻頭言で、守島基博は、「自律」とは他からの支配や制約を受けずに自分自身で立てた規範や目標に従って行動することと定義し、これからの日本の働き手には、以下の2つの自律が求められるとしている。それは、
✔ 働く人が自らのキャリアの開発を自らの責任と判断で進めること(組織からの自律)
✔ 組織の理念やビジョンのもとで、プロフェッショナルとして組織に貢献する人材となること(組織への自律)
である。この2つ自律は、お互いに相乗効果をもち、高めていくものだという。

日本型組織を社会に適応させる
 働く人に2つの自律を促すためには、同時に、自律した人が活躍できるように社会そのものを変えていく必要がある。牛尾治朗・宇野重規・谷口将紀は、「『中核層』を軸に信頼社会を築け」(Voice 2013年7月号)で、それを「信頼社会」という言葉で表現した。信頼社会とは、人々が自分の生き方を自由に選択でき、長期的な人間関係に依拠しない、フリー・フェアー・オープンな社会である。信頼社会は、自律した働き手にとって望ましい社会に違いない。しかし、信頼社会を模索するうえで重要な点は、同氏らも述べているように、これまで高い評価の対象となってきた終身雇用や年功序列などの雇用慣行に象徴される日本型組織を安易に全否定するのではなく、日本型組織の優れた特質を保持しつつも日本型組織をあらたな社会状況に適応していくことである。
 戦後、日本の高い技術を支えてきたものは、現場主義、チーム力、柔軟性である。こうした日本の優れた特質は日本型組織のなかで培われたものである。それが、情報技術の進展を受けて、個人や社会のあり方が大きく変わるなかで、毀損されることがあってはならないはずだ。情報技術によって職場が大きく変わりつつある今、日本の強みがまだ存在するうちに、これらを維持できる新しい雇用システムを模索しなければならない。そしてそれは、先進国のなかで日本にしか、成し得ないことである。











 神田玲子  NIRA研究調査部長


<関連記事>
働く人の自律を考える-会社人間という殻を打ち破れるか-」(NIRA研究報告書/2012年5月)

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