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NIRA政策提言ハイライト

一票の格差是正で民主主義は機能するのか?

NIRA政策提言ハイライト 2014/1発行

 国会議員1人当たりの有権者数が選挙区によって異なるのは、日本国憲法が保障する法の下の平等に反するとする一票の格差是正運動が活発である。同問題では、最近、衆院選や参院選の選挙結果に関して違憲状態であるとする旨の判決が相次いでいる。
 一般的に見れば、地方ほど国会議員1人当たりの有権者数が少なく都市ほど多い傾向にある。しかも、地方ほど高齢化が進行していることを勘案すると、地方の高齢者の政治的な意見ほど、国会に届けられやすくなっていると指摘できる。
 少子化、高齢化の進展で、このように高齢者の政治的な存在感が増す一方で、若者の声が政治の場に届きにくくなり、高齢者の権利保護が優先されるという主張はシルバー民主主義と称されている。
 NIRAモノグラフシリーズNo.34「社会保障制度を通じた世代間利害対立の克服―シルバー民主主義を超えて―」では、わが国の深刻な世代間格差の大きな原因である社会保障制度に関して、給付と負担の均衡化の抜本的な改革が行われない背後には、政治的な存在感を増す高齢世代の意向、高齢者に負担増となる制度改革の先送りがあると指摘している。
 こうした中で、一票の格差是正運動で、地方に多い高齢者と都市に多い若者の投票価値のバランスを回復することは、シルバー民主主義に対抗するものと期待されるだろう。
 ただし、前述のNIRAモノグラフシリーズにもあるように、2010年時点では有権者に占める60歳以上人口の割合は40%弱であるが実際の投票者に占める割合は45%程度である。しかも、2050年には同割合がそれぞれ52%、57%程度と過半数を超えてしまう。若い世代は有権者人口で見ても投票者人口で見ても少数派である。
 したがって、今後都市部においても高齢化が進行するため、一人一票の価値を実現するだけでは、結局、若者の権利を保護するには不十分であり、逆に高齢者の政治的なパワーを増してしまう結果となりかねない。
 それを防ぐ手段としては、NIRA対談シリーズ第62回「『ドメイン投票法』の衝撃」において、子どもを持つ親に子どもの分まで投票権を付与することを提唱するドメイン投票法について議論を行っている。同投票法は一人一票の原則に反するものであるが、次世代の利益が意思決定に反映されないという現在の投票システムが抱える本質的な問題点を正面から考える際の突破口になりうると指摘している。

島澤 諭 NIRA主任研究員


<関連頁>
社会保障制度を通じた世代間利害対立の克服―シルバー民主主義を超えて―」(NIRAモノグラフシリーズNo.34/2012年7月)
『ドメイン投票法』の衝撃」(NIRA対談シリーズ第62回/2011年4月)

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