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NIRA政策提言ハイライト

自由化が進む電気とガス ― 新たなエネルギー間競争の時代へ

NIRA政策提言ハイライト 2013/11発行

電気とガスで進む自由化への動き
 2013年の11月は、エネルギーの自由化を巡って、2つの大きな動きがあった。一つは、13日の改正電気事業法の成立である。いよいよ、電力の自由化へ向けた後戻りできない一歩が踏み出された。もう一つは、その前日12日のことであった。資源エネルギー庁総合資源エネルギー審議会に設置されたガスシステム改革小委員会の一回目の会合が開かれた。電力の自由化と同様、ガスにも自由化を取り入れるかどうかの議論が開始されたのである。ガスシステム改革の目的の一つには、新たなサービスやビジネスの創出がある。電力システム改革との相乗効果により、複合的なサービスの創出が期待出来るということである。これにより、ガスと電気の関係はどのように変わるのであろうか。

電気とガスは昔からライバル関係
 歴史的に見て、電気とガスは互いにライバル関係が続いていた。
 1870年、日本最初のガス会社である日本ガス社中が設立され、1872年に同社により横浜のガス灯が整備された。これが日本でのガス供給事業の始まりである。当時のガス事業はガス灯という光源の提供が中心であった。それから10年が経過した1882年、日本最初の電力会社である東京電燈会社が設立され、日本の最初の電力供給事業として1887年に鹿鳴館の白熱灯が点灯された。ガスが先行していた光源市場に、電気という代替技術が参入したのである。その後、電気は、安全・無臭・安定という特徴と、コスト優位性により大きく普及し、ガス灯はほぼ姿を消した。明治期の光源市場における電気とガスの争いは、電気に軍配が上がったのである。
 光源としてのガスに先が無いと判断したガス会社は、1900年代に入って、熱源としての道を模索し始めた。ガスかまどなどの調理機器やガスストーブなどの暖房器具の普及に乗り出したのである。電力会社も、後を追うようにして電気ストーブを販売し、熱源利用に乗り出したが、熱源としての競争は、ガスの勝利に終わった。
 このようなエネルギー間の競争を経て、光源利用は電気、熱源利用は主にガスという、エネルギー利用上の棲み分けが生まれた。エネルギー間競争はしばらくの休息を迎えたのである。
 また、制度上も電気事業とガス事業の区別が確立していった。電気事業法とガス事業法が整備されたが、電気、ガスともに、地域独占が前提であり、電気事業者、ガス事業者がその他の事業を営むことを禁止する規定が盛り込まれた。電気事業とガス事業は別個の存在となったのである。
 1969年のLNG(液化天然ガス)の登場により、両者の関係に変化が訪れた。石油危機以降の1980年代からは、発電でもLNG利用が急拡大し、両者のエネルギーとしての結びつきが強くなったのである。こうなると、通常では、例えばガス事業者であれば、自社の豊富な天然ガスの在庫を利用して発電事業に乗り出したり、逆に電気事業者であれば、自社の発電のために使う天然ガスの一部を一般への販売に利用するなど、事業の多様化を図る。しかし、電気事業とガス事業は、制度上、個別に不可侵であったため、双方の事業者が互いの領域に進出することはなかった。
 一方で、近年では新技術の登場により、電力とガスは再びエネルギー間競争が発生するようになった。例えば、IH調理器具の登場に端を発した1990年代以降のオール電化サービスの普及は、熱源としてのガスを不要にする代替技術である。また、2009年に登場したエネファームは、家庭における電力の供給源をガスが代替するという技術であり、電力会社の市場を奪うものである。エネルギー間競争は、今も続いているのである。

総合エネルギーサービスへ向けて
 電力とガスが自由化されたら、エネルギー産業はどう変わるのであろうか。
 NIRA対談シリーズNo.69「天然ガスが新しいエネルギー政策を拓く」(村木茂東京ガス株式会社代表取締役副社長執行役員、伊藤元重NIRA理事長)では、今後の日本のエネルギーを考える上で、今まで以上に重要な役割が期待される天然ガスの可能性について対談を行なった。その中で、村木は、公共インフラとしてガスパイプラインをネットワーク化することが急務であり、それにより、エネルギー産業のボーダーレス化が進むと指摘している。これにより、ガスコジェネを中心として新しいサービスの可能性が広がり、また、国際展開のチャンスも生まれるという。
 では、自由化で先行している海外ではどうなっているのだろうか。イギリスにおいては、例えば、1990年代に設立された通信会社Telecom Plusが、The Utility Warehouseというブランド名で、電気、ガス、通信をワンセットにしたサービスを提供している。エネルギーの枠を超えたサービスの多様化が実現している。また、2000年にエネルギーが自由化されたフランスでも、エネルギーのボーダーレス化が進んでいる。これまで、電気はEDF、ガスはGDFという国営企業が、それぞれの分野を独占して営んでいたが、自由化後は、両者が電気とガスの両方を提供する総合エネルギー会社としての道を歩み、それぞれが競争しつつ、国際展開も進めている。どちらも、エネルギー源としてのガスと電気はライバル関係から融合関係となり、総合的サービスが展開されるようになっている。その一方で、電気事業やガス事業、さらには通信事業を主軸とした各企業が、産業の枠を超えて、競争をしているのである。
 完全自由化に至っていない現在の日本においても、事業区分の枠を超えた競争は、小さくではあるが、既に始まっている。1990年代以降、双方において自由化が進展したこと、1999年に両事業法で兼業禁止規定が廃止されたことにより、例えば、電気会社は附帯事業として熱供給事業やガス供給事業などを開始しており、また、ガス会社と資本関係をもつ新電力が電気事業に参入している。
 電力事業とガス事業が完全に自由化された後には、このような競争が大きな潮流となり、電力会社とガス会社が直接的にぶつかり合うことになるだろう。電気事業・ガス事業の枠を超えた大競争時代が到来するのである。それと共に、電力とガスが融合された総合的なエネルギーサービスや省エネ技術も発達し、消費者の利便性が向上することが期待出来る。

[注]
1 それまでは、火力発電は石油および石炭が中心であり、ガスが使われることはなかった。
2 ガスを燃料とした家庭用分散型電源。廃熱を温水供給に利用でき、エネルギーの高効率利用が可能。
3 ガスを燃料として、熱と電気を供給する熱電併給システム。発電における廃熱を熱水や蒸気の供給等に利用できるので、
    エネルギーの無駄を減らすことが期待出来る。
4 現在は、GDF Suez S.A.。

西山裕也 NIRA主任研究員


<関連頁>
天然ガスが新しいエネルギー政策を拓く」 (NIRA対談シリーズNo.69/2012年9月)

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