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NIRA政策提言ハイライト

次世代に残せる制度改革を

NIRA政策提言ハイライト 2013/9発行

拡大する医療・介護需要への対応
 厚生労働省では社会保障国民会議の報告書を受け、介護保険制度の見直しに関する議論を始めている。2013年9月に開催された社会保障審議会の介護保険部会では、一律1割となっている介護保険の自己負担割合を一定所得がある人については2割に引き上げる、特別養護老人ホーム(特養)の入居要件を厳しくする、といった改革案が提示された。
 既に、介護サービスに係わる給付費は導入時の3.6兆円から2倍以上に拡大してきており、制度の持続性を確保するためには大幅な見直しが不可避とされる(図表参照)。75歳を越える年齢層では、医療・福祉の継続的サポートを必要とする割合が高まることが知られている。今後、より一層増加することが見込まれる医療・福祉サービスの需要にいかにして対応していくのか、日本社会が直面する大きな課題である。

社会保障制度導入の原点
 2013年7月に公表したNIRA政策レビューNo.61「医療を再生する道を探る」においても、日本の医療・福祉制度は予断を許されないほどの危機的状況にあり、改革が急務であることが指摘されている。医療保険や介護保険などの導入の原点に立ち返ってみれば、それは相互扶助の精神に立脚し、リスクを社会で分かち合うことを通じて個人や家族を支えるための制度だったはずである。しかし、現状は本来の目的からかけ離れ、個々のステークホルダーが自らの利益を追求し、将来世代へのつけ回しの形で制度の維持が図られてしまっている。
 高齢者数の大幅な増加を眼前に、我々は医療保険や介護保険といった制度を、後世までつないでいくのか、それとも、後世からそれらを享受する権利を奪い、制度崩壊まで現状を放置するのかが問われている。誰がどれだけ負担するのか、誰からどのくらい給付を削減するのか、すべての人が満足できる制度を詳細に設計することは容易ではないが、原点に回帰しての立直しを選択するならば、年齢を問わず、一定の給付削減と応能負担の導入はやむを得ない状況にあることも指摘されている。このことは、年金制度においても同様のことが言われ、NIRA研究報告書「国債に依存した社会保障からの脱却-シルバー民主主義を超えて-(2013年2月)」等にも示されている。

制度改革への合意形成
 2020年に56年ぶりに東京でオリンピック・パラリンピックが開かれる。21世紀の五輪としては5カ国目となり、最も高齢化率の高い開催国である。この東京五輪は、2011年3月11日の東日本大震災からの復興とともに、シルバー社会のあり様を世界に示す機会ともなる。わが国は、超高齢時代においても快適な都市、高齢者のQOL(Quality of Life)を支える持続可能な医療・福祉のあり方など、新しい社会像を世界に先駆けて提示することができるのだろうか。現世代にとっては、必ずしもプラスをもたらす改革ではないかもしれないが、7年後の2020年に向け、後世のためにも年齢や境遇を越えて制度改革の合意形成に努力していかなければならない。

豊田奈穂 NIRA主任研究員

<リンク>
医療を再生する道を探る
(NIRA政策レビューNo.61/2013年7月)

国債に依存した社会保障からの脱却-シルバー民主主義を超えて-
(NIRA研究報告書/2013年2月)

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