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NIRA政策提言ハイライト

シルバー民主主義を超える取り組み

NIRA政策提言ハイライト 2012/12発行

拡大する社会保障
 2012年11月30日、医療・ 介護や年金などの将来像を議論する「社会保障制度改革国民会議」の第1回会合が開催された。その前日、国立社会保障・人口問題研究所は、 2010年度の社会保障給付費が前年度比で3.6%増のおよそ103兆5,000億円にのぼり、 初めて100兆円の大台を超えたことを公表した。内訳をみると、医療費が全体の31.2%を占める一方、 年金給付費は50%以上に及んでいる(図参照)。
 急速に進む高齢化の影響が顕著に表れた格好だが、 年金給付費には人口規模の最も多い第1次ベビーブーマー(1947-49年生)はまだ含まれていない。 既にその世代も高齢期に差し掛かっていることに鑑みれば、年金、医療・介護に係わる給付のより一層の増大は避けられない。 合計特殊出生率が2.0を割り込んでから40年近くになろうとしており、勤労世代が先細りする現状下において、 給付と負担の関係を見直す本格的な取り組みがないままに制度の持続性を確保することは難しい。

シルバー民主主義
 NIRAモノグラフシリーズNo.34 「社会保障制度を通じた世代間利害対立の克服-シルバー民主主義を超えて」では、社会保障制度の抜本的な改革が放置されてきた結果、 現制度下において世代間の格差が拡大していると指摘する。
 事態の背景には、少子化、高齢化が進行する過程において、有権者の年齢層が高い側に寄り、 高年齢層にとって有益な政策が採用されるシルバー民主主義が横たわっていることがあるという。 政治的な意思決定が多数決の原理に基づく政策決定において、多数派の選好が強く働くことは当然の結果ではあるが、 歪な人口構成のもとでは世代間不均衡に直結することが危惧されている。例えば、 2010年に実施された第22回通常選挙のアンケート結果でも、60歳以上の世代は教育問題に関心を寄せておらず、 20-30歳代との間に温度差が感じられる。すでに高齢化が義務教育に関わる公的支出を抑制させる効果を持つことも確認されている(大竹・ 佐野[2009]参照)。これは、若い世代は社会保障給付に限らず、 自らに関わる公的サービスの給付水準そのものが低下する可能性があることを示唆しており、社会保障は高齢者の問題とばかりは言い切れない。

課題の克服に向けて
 2012年3月31日現在、 住民基本台帳に搭載されている20歳以上人口は1億300万人、そのうち65歳以上は28.6%、 年金予備軍として55歳以上人口でみても現段階では半数までには至っていない。しかし、 約10年後の2020年には55歳以上の世代が50%に達することが予測され、その重みは今まで以上に増すことになる。 NIRAモノグラフNo.34では制度持続性の確保がすべての世代にとって有益であるとの共通認識のもと、 これまで十分に制度の恩恵を享受してきた高齢者に負担の受忍を迫る改革の必要性が示されている。これまで関心の薄かった若年世代も、 高齢世代とともに自らの負担と給付の均衡に向け、政策決定に関わる議論に参画することが必要な時期を迎えている。
図:社会保障費用の推移 

豊田奈穂 NIRA主任研究員


<参考文献>
大竹文雄・佐野晋平(2009)「人口高齢化と義務教育費支出」『大阪大学経済学』第59巻第3号
先送り許されぬ社会保障・税の一体改革」(NIRA政策レビューNo.55/2012年2月)


<リンク>
社会保障制度を通じた世代間利害対立の克服-シルバー民主主義を超えて」(NIRAモノグラフシリーズNo.34/2012年7月)

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