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NIRA政策提言ハイライト

政策レジームを転換しリスクの社会化を

政策提言ハイライト 2012/11発行

高まる将来への不安
 消費税率引き上げ法案の成立など一定の成果は見られたものの、 将来の社会保障制度のあり方などを検討する社会保障制度改革国民会議が与野党の対立などから一向に設置されず、 社会保障と税の一体改革に対して、冷ややかな視線が国民から向けられている。そうした中、内閣府が8月に公表した 「国民生活に関する世論調査」(2012年6月調査)によると、日常生活のなかで「悩みや不安を感じている」者の割合は、 前回調査(2011年10月調査)に比べ2.0%ポイント上昇し69.1%と、 2008年6月調査の70.8%に次ぐ過去2番目の高さとなっている。そのうち、不安の理由として「老後の生活設計について」 を挙げた者の割合が55.3%と最も高い。年齢別に見ると、40歳代、50歳代で多くなっている。さらに、今後の生活のために 「貯蓄や投資など将来に備える」と答えた者の割合が33.5%と、前回の調査結果から上昇している。
 このアンケート調査結果からうかがえるような日常生活や今後の生活などに関する不安は、 現行の社会保障制度がリスクを公平に負担できていないことに起因すると考えられる。

先進各国の政策レジーム
 NIRA研究報告書『「市場か、福祉か」を問い直す-日本経済の展望は「リスクの社会化」で開く-』(2010年3月)第3章 「諸外国におけるリスクへの政策対応」では、先進各国の福祉・雇用制度に対する政策レジームとそれに対応する経済パフォーマンスを、 次のように整理している(図表)。
 ①自由主義レジームとは、市場メカニズムによる資源・賃金の配分を尊重し、 政策による再分配は必要最低限に留める国々の政策レジームを指す。アングロサクソン諸国が該当する。これらの国々では、 経済のパフォーマンスが高いことが予想される一方、経済格差や貧困にいる人の割合が多くなることが予想される。
 ②保守主義レジームとは、所得再分配政策を重視するが、その機能を家族、企業などの伝統的組織による共同扶助(保険等)に担わせ、 国家の関与を限定的、かつ共同体を補完するものと考える国々の政策レジームを指す。大陸ヨーロッパ諸国が該当する。
 ③社会民主主義レジームとは、所得再分配政策を重視するが、その機能を主に国家が担うこととし、 再分配政策の給付対象の範囲が広い点において普遍主義的・包括的である国々の政策レジームを指す。北欧諸国が該当する。

リスクの社会化を
 その上で、 諸外国の政策体系をもとに日本の政策の根本的な欠陥を浮き彫りにし、「個人」が過重にリスクを負担する社会から、「社会」 が公平にリスクを負担する社会へ移行するための制度設計、つまり、「リスクの社会化」を柱とした政策体系へのシフトを提言している。
  そのために日本が目指すべき方向性は、①所得再分配における公平性の重視、②市場メカニズムの活用による効率性の重視、 ③個人にとって柔軟かつ多様な選択肢を持つ社会への転換、の3つに集約されるとした。

図表 経済パフォーマンスの各国比較

島澤 諭 NIRA主任研究員


<リンク>
「「市場か、福祉か」を問い直す-日本経済の展望は「リスクの社会化」で開く-」(NIRA研究報告書/2010年3月)
 

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