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NIRA政策提言ハイライト

電力システム改革を考える上で必要な視点

NIRA政策提言ハイライト 2012/10発行

東日本大震災が投げかける電力システムへの疑問
 1990年代以降、日本では、 より効率的な電力供給を実現するため、電気事業の自由化が徐々に進展してきた。この流れの中においても、 これまでは発電部門と送配電部門の間の調整機能を確保することが重視されてきたため、電力会社が発電、送配電、小売りの全てを有する 「垂直統合型」の体制が基本となっていた。しかし、2011年3月の東日本大震災に起因して発生した様々な事象は、 日本の電力システムが有する種々の問題を顕在化させ、この垂直統合型の電力供給体制に大きな疑問を投げかけた。そして、本年7月、 経済産業省総合エネルギー調査会総合部会電力システム改革専門委員会でとりまとめられた「電力システム改革の基本方針― 国民に開かれた電力システムを目指して―」において、配送電部門の「分離」を含めた、電力システム改革の方針が打ち出されたのである。では、 この改革の方向性はどのような視点で捉えればよいのだろうか?

広域と分散で市場メカニズムを活性化する
 NIRAオピニオンペーパーNo.3 「電力改革の方向を考える」 (2011年8月)において、伊藤元重(NIRA理事長)は、日本が目指すべき電力改革の方向性について論じている。 日本の電力システムは、これまで、電力会社が発電から小売りまで一貫して行う地域独占であり、いわば、「配給型」であったが、今後、 発電部門や小売り部門に新規参入を促して、これを「市場型」へ移行させる必要があるとしている(下図参照)。
 また、この中で伊藤は、目指すべき将来の電力システムの姿を、「広域」と「分散」の二つのキーワードで表している。「広域」とは、 これまで地域ごとに分割されていた電力供給体制を、地域を越えたネットワークに広げることである。「分散」とは、 今までの少数の電力会社が提供する大規模な「集中型」電源を中心とした供給体制に対して、多くの参加者が発電や小売りなどの市場に参入し、 多様な供給体制となることである。広域と分散により、天災などで生じる電力供給の変動を平準化でき、電力システム全体で安定性が向上する。 また、消費者も、多くの電力供給者から選択できるようになり、多様なサービスを受けられるようになるのである。
 このような市場メカニズムを取り入れる上で鍵となるのは、発電部門および小売り部門から送配電部門を分離することであると、 伊藤は主張している。では、どのように分離すればよいのか?

図 電力システム改革における 

送配電部門は規制強化し透明性・公平性を高めよ
 NIRA対談シリーズNo.65 「電力供給システムは垂直統合から構造分離型へ」 (2011年10月)において、山田光(スプリント・キャピタル・ジャパン代表取締役)は、 配送電分離で先行するEU諸国の事例を紹介しつつ、改革後のあるべき電力制度の方向性を示している。EU諸国においては、 電力の自由化とともに発送電分離が進んできたが、発電部門や小売り部門では自由化する一方で、送電部門と配電部門に関しては、 逆に規制を強化しているという。送配電部門は共通基盤(インフラ)であるため、発電・ 小売り市場を活性化させるために必要な透明性と公平性を担保するための規制強化が欠かせないからである(上図(b)参照)。
 また、電力システム改革を行う上では、目先の議論にとらわれず、最終的なマーケット・デザインを考えた上で、 それを実現させるためのロードマップを描くことが重要である旨指摘している。

西山 裕也 NIRA主任研究員  


<リンク>
電力改革の方向を考える」(NIRAオピニオンペーパーNo.3/2011年8月)

電力供給システムは垂直統合から構造分離型へ」(NIRA対談シリーズNo.65/2011年10月)
ゲスト:山田光 スプリント・キャピタル・ジャパン代表取締役 聞き手:伊藤元重 NIRA理事長

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