利用方法

日本を動かす知をつなぎ、政策課題を論じ、ビジョンを提示するシンクタンク

トップ > 研究の成果と課題の発信 > NIRA政策提言ハイライト > 都市の老い-新たなまちづくりの好機-

NIRA政策提言ハイライト

都市の老い-新たなまちづくりの好機-

NIRA政策提言ハイライト 2012/03発行

施設の老朽化
 2012年2月、 北海道夕張市の市立美術館では積雪にともない屋根が崩壊した。施設閉鎖中のため人的被害は免れたが、 夕張市では2008年3月にもスイミング施設の屋根が崩落する事故が起きている。 2007年にアメリカのミネソタ州で築後40年を経た橋が落橋して以降、わが国でも橋梁や高速道路の詳細な点検が実施され、 都市インフラの老朽化が危惧されてきた。夕張市の2つの事故も施設の老朽化が一因として指摘されているが、 首都圏の都市インフラも耐用年数が迫りつつある。

インフラの更新期と都市の再設計
 NIRAが2012年1月に公表した『老いる都市と医療を再生する-まちなか集積医療の実現策の提示-』(まちなか集積医療の実現に関する研究会)では、人口の高齢化に加え、 公共施設の老朽化にも着目し、インフラの更新を都市再設計の好機として活かすことが望ましいとの考え方を提示している。 人数の多寡にかかわらず、利用者のある既存ストックを再編することは容易ではないが、 耐用年数の前後で浮上する施設の建替えや廃止などの検討と連動させ、施設の機能と立地の再編成を図ることは可能であると指摘する。

パラダイムの転換期
 現在、老朽化が問題となっている都市インフラは、 1960年代から70年代に、その後も人口が増加し続けることを前提として整備されたものである。しかし、 わが国では1974年に合計特殊出生率が人口置換水準(現在の人口を維持できる合計特殊出生率の目安)を下回ってから既に35年以上が経過しており、 少子化対策が劇的に功を奏したとしても、長期的な総人口の減少は避け難い。人口増加、都市拡大、 現役世代中心など社会が前提としてきたパラダイムの転換を認識することが必要である。

まちなかの高密度化
 人口減少・ 高齢化にともないコンパクトシティの実現が期待されて久しいが、人や施設の集積はそれほど進んでいない。 広域的な都市計画のもとで生活圏全体を俯瞰しながら、中心市街地に医療・福祉、住宅、商業、文化・教育をはじめ、 必要とされる都市機能の集積を図り、そこへのアクセスを可能にする関連インフラの整備を進めることが急務である(図参照)。前述のとおり、 都市インフラの寿命は確実に近づいている。人口減少、少子・高齢化を見据え、都市縮小と高密度なまちづくりの機を逃してはならない。
 
toyoda1 

豊田 奈穂 NIRA主任研究員

<リンク>
NIRA研究報告書『老いる都市と医療を再生する―まちなか集積医療の実現策の提示―』(2012年1月)

このページのトップへ