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NIRA政策提言ハイライト

社会保障と財政再建の両立に向けて、自助・共助・公助の範囲の見直しを

NIRA政策提言ハイライト 2011/09発行


社会保障・税一体改革成案

 2011年6月末に決定された「社会保障・税一体改革成案」(以下「成案」)においては、社会保障改革による「充実」と「重点化・ 効率化」(2015年時点でそれぞれ+3.8兆円、▲1.2兆円。追加所要額約2.7兆円程度)を通じて中規模・ 高機能な社会保障体制の実現を目指すとともに、今後増加する社会保障財源を賄うため、2010年代半ばまでに消費税率を段階的に10% にまで引き上げるとの方針が示されている。これを受け、野田総理大臣は同9月13日の所信表明演説において、 成案を土台として与野党での協議を積み重ね、来年1月より開催される通常国会に関連法案の提出を目指すことを表明した。

成案は財政再建に向けた「一里塚」

 NIRAは2011年4月に研究報告書『財政再建の道筋』(伊藤元重NIRA理事長他)を公表し、 悪化の一途をたどる日本の財政状況が国債市場に及ぼす影響等について論点整理を行うとともに、 今後必要となる財政再建のあるべき姿や進め方について政策提言を行った。
  同報告書の第6章では、マクロ計量モデルを用いた財政・社会保障改革に関するシミュレーション分析を行っている。 これによると、現行制度の下で政府の「財政運営戦略」(2010年6月閣議決定)に示された財政健全化目標( 「遅くとも2015年度までに国・地方の基礎的財政収支(PB)赤字の対GDP比を2010年度から半減、2020年度までに黒字化」、 「それ以降、国・地方の公債等残高の対GDP比を安定的に低下」)を達成するためには、2020年度にかけて消費税率をそれぞれ16%程度、 22%程度にまで引き上げることが必要であるとしている(図1)。従って、成案でも言及されている通り、消費税率引き上げに関する方針は、 あくまでも財政再建に向けた「一里塚」に過ぎず、 その実現後においても歳出削減や増税等を通じ相当な規模での収支改善努力を継続することが不可欠であるといえる。

図1 国・地方政府の公債残高GDP比の見通し


 
最低保障年金の制度設計に際しての視点

 また成案は、「新しい年金制度の創設」実現のため、国民的な合意に向けた議論や環境整備を進めるとして、所得比例年金 (社会保険方式)と最低保障年金(税財源)について検討を進める方針を示している。上述のシミュレーションにおいては、 一定の消費税率による税収を財源とする最低保障年金の給付水準についても試算を行っている。これによると、 所得に関係なく一律の金額を給付した場合には、現行の基礎年金の給付額をかなり下回る水準にしかならないのに対し、大規模なクローバック (高所得者について最低保障年金の全額ないし一部の給付を停止する制度)を導入した場合では、 満額支給対象者に対しては現行基礎年金を上回る給付水準となり得ることが示されている(図2)。
 今後、限られた財源の下で社会保障の機能を最大化するためには、税財源を活用した公助の範囲を重点化していくことが不可避である。 その上で、公助の範囲外となるリスクについては、日本版IRAの導入(報告書第5章で提言)等、 人々による自助や共助を喚起するための政策支援の充実を通じて対処することが求められる。


 太田 哲生 NIRA総括主任研究員

<リンク>
NIRA研究報告書『財政再建の道筋-震災を超えて次世代に健全な財政を引継ぐために-

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