利用方法

日本を動かす知をつなぎ、政策課題を論じ、ビジョンを提示するシンクタンク

トップ > 研究の成果と課題の発信 > NIRA政策提言ハイライト > 国際標準化でイニシアティブをとれ

NIRA政策提言ハイライト

国際標準化でイニシアティブをとれ

NIRA政策提言ハイライト 2011/08発行

iPS細胞の国際特許が成立

去る2011年8月11日、京都大学は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)の幅広い基礎技術について、 欧州に続き米国でも特許が成立したと発表した。これにより、 成長著しい再生医療分野において日本が国際標準化の主導権を握るための重要な布石となった。

制度選択が国際競争力を左右する

NIRAでは、2009年10月にNIRA研究報告書『アジアを「内需」に ―規格・制度の標準化で―』(柳川範之著)を公表し、 世界規模で広がる経済活動の帰趨が、制度の選択によって大きく左右される時代に我々は直面していると指摘している。そのなかでも、 国際標準など国境を越えた規格や制度のハーモナイゼーションが果たす役割が急速に拡大している。そのため、 市場規模の大きな国はその影響力を活かして、政府自体が国際標準などの制度選択に大きく関与するようになっている。報告書では、日本は、 自らの強みを活かしつつ、経済活動を広く促進するような標準選択が行われるよう国際的に働きかけていくことが重要だと訴えている。

国際標準化_図表大(余白) 

 

 

 

 

 

 

 

iPS細胞の国際標準化を目指して

iPS細胞は、世界が注目する再生医療分野の中核を担う技術だと目されている。日欧米、 そして中国などアジアの複数のグループも研究開発・国際特許獲得競争で鎬を削っている。その基礎技術において、京都大学が戦略的な国際連携 (複数の国際特許を申請済みの米ベンチャー企業との提携)を基盤に国際特許を成立させたことは大きな成果であった。今回、 市場規模の大きな欧州での特許成立(7月11日)に続き、世界最大市場である米国での特許が成立したことによって、 日本が主導する形でのiPS細胞技術の包括的な国際標準化への展望が大きく開けた。

新しい時代の国の支援ができるか

日本は、再生医療分野全般で国際標準化などのイニシアティブをとり、 さらにこの分野の世界市場でのリーダーとなることで日本の経済成長の主役の一つを確保したい考えである。同時に、再生医療分野が特定の企業・ 国に偏った利益をもたらさないための基盤整備も進めたいとしている。京都大学のiPS細胞技術が現在の勢いにのって国際標準となれば、 大きな光明となることは間違いない。しかし、なすべきことは山積している。例えば、 市場としては未だ小さいが将来性の大きい中国などアジア諸国への対策や連携も考えねばならない。こうしたこと全てを、一企業、 一大学が担うことはできない。そのため、日本政府の支援の在り方そのものを再考する必要がある。今回、 京都大学は周到な知財管理戦略をもって行動し、それに政府が資金・情報提供面で支援したことが功を奏した。報告書が強調しているように、 そのような補助金を中心とした支援策に加えて、今後、日本政府は、国際的な制度選択に関する知識と対応策を蓄積した専門人材を育成し、 そうした人材を適切に活用することにも力を入れるべきである。日本経済にとってのみならず、世界の経済活動を広く促進する制度の選択を、 日本が主導することができるような体制づくりが求められている。

森 直子 NIRA主任研究員


<リンク>
NIRA研究報告書『アジアを「内需」に ―規格・制度の標準化で―』(2009年10月)

このページのトップへ